The Hokkoku Shimbun ひと to みらい─石川の未来へつづく、石川の人のこと。

ISSUE#11

加速する人口減少。
私たちに今できることを考えていきます。

わーみんなの回答を見る

地域包括ケアシステムの構築に独自に取り組む。

 戦後ベビーブーマー、いわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年に、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となる超高齢社会の到来が予想されています。高齢化の加速は石川県でも同様で、県人口が2015年の約115万3000人から2025年には約109万6000人に減少する一方、75歳以上の人口は約15万5000人から約20万8000人に増加し、全国値とほぼ同様に県民の5人に1人が75歳以上となります。
 そうした事態に備え、高齢者が住み慣れた地域で可能な限り自立した生活を送ることができるよう、医療、介護、介護予防などの総合的な支援を行う「地域包括ケアシステム」の構築が全国的に急がれています。
 「地域包括ケアシステム」は、医療事業者・介護事業者・自治体・地域住民間の密な連携と情報共有によって支えられるもので、地域ごとの事情に応じた仕組みづくりが各地で進められているところです。これが理想形、完成形といえるモデルはまだ生まれていませんが、高齢化が他地域より一足飛びに進行する能登で、注目されるシステムが民間事業者主導でいち早く設けられています。恵寿総合病院(七尾市)を中心とする恵寿グループが独自に構築し、2000年から運用する「けいじゅヘルスケアシステム」です。
 同システムは、社会医療法人財団董仙会と社会福祉法人徳充会とで構成される恵寿グループ内のデータベースを一元化した統合電子カルテを活用し、医療・介護・福祉・保健の境目を取り払ったサービスをワンストップで提供する仕組みです。ICT(情報通信技術)を活用した先進的サービスとして評価され、昨年6月に「“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービス」の呼称で第1回日本サービス大賞総務大臣賞を受賞しています。
 グループ全てのサービスの問い合わせや予約受付の窓口をコールセンターに1本化し、スタッフが電話で患者・利用者の希望や相談に対応。各現場では統合電子カルテに蓄積された履歴データを確認します。
 「特に、提供するサービスが多施設多制度にまたがたる場合、1患者1IDで管理・共有化した情報は効果を発揮します」と恵寿グループの神野正博理事長は説明します。
 例えば、高齢者は医療と介護、双方のサービスを同時に受けているケースが少なくなく、身体の状態も刻々と変化します。患者・利用者の過去から現在までの情報をトータルに把握していることは、最適な医療介護サービスを選択・提供する際に大きな判断材料となるのです。
 恵寿グループでは、通院患者や車を運転できない高齢者のために、会員制の無料送迎サービス「楽のり君」を2015年秋からスタートさせるなど、「“恵寿式”地域包括ヘルスケアサービスはまだまだ進化の途上」と神野理事長は語ります。
 このように、地域の医療・介護・福祉を包括的に支える仕組みづくりは先行事例も生まれ、徐々に進んでいますが、半面、その担い手となる医師、看護師、介護職の不足が能登や南加賀で課題となっています。とりわけ医師確保は難題で、県では卒業後の県内公立病院での医療従事を条件に合格者に修学資金を貸与する金沢大学医学類特別枠(緊急医師確保修学資金貸与制度)を2009年度から設け、医師確保に動いています。
 民間医療機関である恵寿総合病院では、そうした制度の恩恵は受けられないものの、臨床研修医を積極的に受け入れる体制を整え、若手医師の目が能登に向くよう努めています。

 同病院の臨床研修センターに勤める尾山量子さん、二川真子さん、志摩純一郎さんは1年目の初期臨床研修医。尾山さんは津幡町、二川さんは神奈川県、志摩さんは愛媛県の出身です。3人は県外大学の医学部を卒業し、総合診療医・家庭医の養成で特色あるプログラムを組む同病院を研修先に選びました。「県内で内科医に」「地域医療を支える総合診療医になりたい」とそれぞれ話し、経験を積み上げています。
 もちろん、地域医療の担い手は医師だけではなく、看護師、リハビリ療法士、薬剤師、管理栄養士、メディカルソーシャルワーカーなど多様な専門職が同病院で活躍しています。
 安心の医療体制とそれを骨格とする地域包括的ケアシステムの構築は地域の魅力を高める効果があります。移住・定住の呼び水ともなるでしょう。

写真左から、初期臨床研修医の尾山量子さん、二川真子さん、志摩純一郎さん=七尾市の恵寿総合病院
写真左から、初期臨床研修医の尾山量子さん、二川真子さん、志摩純一郎さん=七尾市の恵寿総合病院
わーみんなの回答を見る
PAGE TOP